はじめに
今回はコールセンターのたらい回しの話に絡めた、ポエムと言うか駄文回です。
私はテクノロジーというものは人と人とのコミュニケーションを円滑にし、お互いを幸せにすべきものであろうと思っています。
昨今、ChatGPT はじめ、高度なAIの出現で、人と人のコミュニケーションの間に AI を介在させてはどうか、というようなアイデアは多々聞くようになり、しばし技術者同士の雑談の中で星新一の「肩の上の秘書」の話が飛び出したりもしています。
私もかなり昔、ボッコちゃんというの短編集の中の1話としてで読んだ記憶があります。
たしか、セールスマンと客の間でAI的ポジションの肩の上のインコが本音と建て前を変換&通訳(というか取り次ぎ)してくれるというお話だったかと思います。
まさに今のAIを思わせるお話で、星新一さんの先見の明はすごいなと思う次第です。
私事ですが、先日、とある手続きでちょっとしたログイン障害的なトラブルがあり、権限を持ってる人に情報の照会と修正をしてもらわないといけなくなり、問い合わせ窓口が定型対応のチャットしかなく、たらい回しになった後にようやく電話口を案内されて事なきを得た案件がありました。
これに限らないのですが、稀に発生する各種手続きで、そもそもコールセンターの番号に繋がらないとか、音声案内でいろいろ数字を選んで、ようやくオペレーターに転送してもらえたかと思いきや、長時間保留になったりとか、コールバックの電話が出先にいるときに来て書類が確認できなかったとか、そういう事が必要なことは多くはないですが、まあ必要なときはあるわけでして、半日がかりでチャットと電話と並べて時間を浪費することになったりします。
陣内智則さんのコントで 【コント 音声ガイダンス】 というのがありますが、これを見て笑える背景として、「あるある」と思える経験をお持ちの方がそれなりにいらっしゃるのではないかと思います。
1ユーザーとして、「もうちょっと何とかならないの~」と言う思いを抱きつつ、でもこれ対応してくださってるオペレータの方からしても、相手をするお客さんがみんな繋がる前に イライラ度を増幅させる手順を踏んでから 繋いで来てるって嫌じゃないのかな、とか思ってみたわけです。
そういえば、コールセンターの離職率って時々ニュースとかになってるよなと思いつつ、あまり深く考えずに下記を呟いたら、何やらやたらリポストが伸びてしまったりして驚いた次第です。
コールセンターの離職率問題。人間オペレータに繋がる前に、あらかじめ客の怒りゲージをMAXにしてから繋ぐシステムを何とかしないと改善しない気がする。
— Ryuji Fuchikami (@Ryuz88) 2025年8月18日
AIで何とかなりそうな気もするが、逆効果なパターンも多そうな...
私の X は主に FPGA 関連などの技術者さん中心のフォロワーさんが多いので、まさかこんな大勢の人に見られるとは思わず、面白おかしく大げさな表現で書いてしまったのも原因かもしれません(汗)
ポストの反応を見て
X は Twitter 時代から基本的に140文字などの短いつぶやきで、前後の背景など省略して要点だけを書きますので、どうしても読む方々それぞれが持っておられるバックグランドによってさまざまな捉え方がなされます。 まさに多様性といった感じで、様々な意見が飛び交う事となり、とても考えさせられました。
皆様のお話を見ていると、どうやらコールセンターに電話してくる人たちには少なくとも3種類ぐらいはおられて
- オペレータでないと解決できない問題が発生し、電話しか手段が用意されていないので仕方なく電話している人
- 自力解決できないから人間の助けを求めている人(課題の言語化が苦手な人もそれなりに多い???)
- 話すことが目的で電話している人(FAQやチャットを用意しても意味がない人)
など、皆様それぞれいろんなケースを頭に思い浮かべられたようです。
私は当初 1 の視点で書いていたので、それ以外を先に思い浮かべる人も多いのに驚いた次第です。
そういえば私の親などはそろそろ高齢で 2 のパターンも増えているようで、「チャットしか窓口が無くて、一生懸命スマホで文字打ってたらタイムアウトした」などと笑い話をしていたのを思い出しました。
パターン 1 の方々は、問題解決までに「しなければならないこと」と「してもらわないといけないこと」が明確になっており、黙々と手順をこなすだけなので、その手順が複雑で億劫であることがストレス増加要因なわけです。
一方で、事業者側からすると、なんとか 2 の人たちをオペレータに繋ぐ前に自力解決に導いてあげたり、3の方々をシャットアウトしたりして、コールセンターの負荷を減らさないと昨今の労働者不足や離職率なども問題のある中、事業が回らなくなる、という事情もまあ想像できるわけです。
パターン3 の方々は正直わたしの想像から一番遠かったのですが、やはり少なからずおられるのでしょう。 実際は課題は抱えておられるのだとは思いますが、字面通り「話す事」が目的だと、むしろ DOCTOR ELIZA 方面のテクノロジーが当てはまりそうには思いました。 コールセンターで働く方々のご苦労に同情を禁じ得ないコメントも多かったです。
余談ですが、私が「怒りゲージMAX」と書いたのは「紳士的でいられるイライラ限界値」ぐらいのつもりだったのですが、これらの事例を想像された方はもうちょっと激昂している状態を思い浮かべた方も多かったのかもしれません。
実際にはこんな簡単な3パターンには収まらないのでしょうが、この3パターンだけでも同じシステムでまとめて対応するの無理じゃないの? とは思うわけで、なるべく初手での振り分けは重要なポイントには思いました。
有効に IT を活用できているのか?
Slack, Discord, Line などの IT技術を使ったコミュニケーション は、時間や空間を超えての人間間のコミュニケーションの効率化に大きく寄与してくれたと考えております。 特に非同期コミュニケーションは、同期コミュニケ-ションである電話やチャットと違い、多くの場合時間効率を高めてくれたように思います。
一方で、どういうわけかこの手の問い合わせは、クリティカルなものほど同期コミュニケーションしか提供されておらず、ユーザー側からすると不満点ではあります。
ただ、私の親がそうであるように、ITツールをうまく使いこなせない層も一定数おられますので、いくつも手段を用意できない場合、なるべく万人を救済しようとするとレガシーな手段に落ち着かざるを得ない面もあるのかもしれません。
そもそも、サポート業務自体が直接的には利益を生まない 構造であるため、致し方ない面はあるのだと思いますが、逆に「ここにお金を払ってもいい」と言う人も一定数はいそうな気もしていて、もう少し何かお互い幸せになれる解は無いものかとは考えてしまうわけです。
役所の手続きのように利益と無関係に公益性の為の仕事であれればよいのでしょうが、やればやるほど利益が減っていく業務として位置づけられてしまうのでなかなか苦しいところなのでしょう。
AIは今後の解決に繋がるのか?
なんだかんだでChatGPTなど大規模言語モデルと呼ばれるような本格的なAIを導入しようとすると、準備も時間がかかり運用にもお金のかかるので、現時点ではほとんどのところで真の意味でのAIの活用はなされていないとは思っております。
ではそういうものを適用すれば解決するのかというとそうでは無かろうとも思っておりますし、逆効果になる事例が容易に頭には浮かぶわけです。
ですが、「うまく使えば、多少の改善はするかも?」という期待も持ってみたりはするわけです。
冒頭の「肩の上の秘書」に戻ると、このお話の重要な点として、セールスマンもお客さんも双方がそれぞれ"自分のAI秘書"を肩に乗せている点があるのではないでしょうか。このようなユーザーサイドにも立つAIエージェント的なものは、一定の効果の可能性がありそうには思います。
- AIエージェントにやりたいことを依頼(キューイング)しておくことで、同期コミュニケーションを非同期コミュニケーションに変換する
- あわよくばAIエージェントに閉じて問題を解決する
- 会話の中から内容と感情成分を分離して、双方の会話ストレスを減らす(まさに星新一)
などでしょうか。
また、顧客の課題解決をするときに、企業側の重要データにアクセスしたり、顧客側も自身の個人情報にアクセスしたり、が必要なケースが少なからずあります。これも AI に権限移譲できないと、結局人間でないと解決できない問題のまま据え置かれます。
- 企業側のデータにアクセスしたり操作したりできる権限を与えられた企業側AI
- ユーザの個人情報にアクセスできる権限を与えられたユーザーアプリ側AI
- お互いの機密を守りあったAI間のインターフェース仕様の策定
などが整備されてくると、少しは改善しないかななどと妄想を膨らませてみたりもした次第でした。
正直、今のAIではまだ難しい気はしていますが、少し未来のAIに関しては否定できない状況にはなってきています。 計算機コストをケチっているところで「あなた(GPT-5) では難しそうなので、GPT-X に代わって!」みたいなやり取りがなされる日が来るかもしれません。スクリプトが引き継げる点だけはAIのメリットかもしれませんね。
ユーザー側も働く側も少ないストレスで気持ちよく活躍できる社会に進展することを祈る次第です。




